迷子のコイ
「ふざけんなっ!!」


沙紀ちゃんの声が、
体育館中に響きわたった。

体育館の半分側で
バスケの試合をしていた
男のコたちも
その声に驚いて
みんなこっちを見ていた。




「どうした! 何かあったのか!?」


沙紀ちゃんの怒鳴り声を聞きつけて
やってきた体育の先生が
あたしたちと、
沙紀ちゃんたちを見比べながら言う。


「・・・なんでもありません」


ナギを・・・・
いまや、『あたし』ではなく
『ナギ』を強くにらみつけながら
沙紀ちゃんは先生にそう言った。


「だったら練習はじめろっ!」


先生にそう怒鳴られて
沙紀ちゃんたちは
しぶしぶともといた場所に戻って行った。




「ナギ、大丈夫?」


あたしはナギに話しかけた。
でもナギの反応はない。



「ナギ・・・? ナギッッ!!」




―――――――あたしのその声は
ナギの耳に届いたのだろうか。


ナギは、くずれおちるように
その場で倒れ、意識を失った。



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