彼のとなり、彼女のとなり
頭を上げ、先生を見た後


健吾が顔を向けたのは…


千里さんだった。


「やぁ、久しぶり」


えっ、


どういうこと?


久しぶりって、


まるで千里さんと健吾が知り合いみたいなことを言ってる。


私も、


先生も、


若菜も俊一君も


みんな健吾と千里さんを見た。


真っ直ぐ千里さんを見る目は大人で、私の知らない健吾だ。


千里さんは…


健吾を見てから動揺を隠しきれてない。


「ミキ、行こうか?花火始まっちゃったし。」


私の方を見てくれた時、

いつもの優しい笑顔に戻ってた。


私の手を握り、先生達に軽く頭をさげた。


「じゃ、失礼します」


背を向け歩き出そうとした。


が、千里さんがそれを止めた。


「健、待って!」


「健、わたし…私…」


何度千里さんが呼び止めても健吾は振り向かず歩く。


私は…。


後ろを向くのが怖かった。


だって、


呼び止めた千里さんの声が泣いてるようだったから………。
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