彼のとなり、彼女のとなり
NO.5 海とカメラ
“君、モデルやってくれない?”

それはあまりに突然だった。

一瞬静まり返った廊下は 、またいっせいにざわめきたてた。

「…キ、ミキってば!」
若菜に何度も呼ばれて我に返った。
まだ頭の中が整理されていない。
三上先生はただ私の方を見てるだけだった。


「君、名前は?」

相変わらず 愛想のよいわらいで話し掛けてくる。

無視をする私。

「ねぇ、名前は?」

無視、無視。

「君さ、彼女の友達?この子の名前教えてくれない?」

なかなか口を開かない私を諦めて、健吾は若菜に話しかけた。

「あ、あの…」

若菜は私の顔を見て、少し躊躇っていた。
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