涙の夜は語る
二人の夜~プロローグ~
今よりずっと創造も出来ないような未来―――。

そこに二人はいた。

二人の男と女がいた。

二人は研究員だった。
周囲から【博士】と呼ばれ、この国にとってはとても大事な存在だった。

そんな男女が惹かれ合った事から運命は廻りだした。
男と女は互いに愛し合っていた。

それがたとえ仮初の姿だとしても
全てが二人のシナリオ通りだった

やがて二人の間に一人の男の子が生まれる。
全てが互いのシナリオ通りだった。

男は望んだ。
不死の命。
美しい生命。
壊れない【物】。

女は望んだ。
無償の愛。
滅ばない関係。
自分だけを愛す【物】。

だが生まれた【それ】は違った。
二人の望む【物】ではなかった。

生まれたその日から与えられることを強請り
何も与えようとはしない。
ただ愛されることを望み
ただあることがまるで神に許されているというように
存在を強請った。

二人は人間を呪った。
美しくないこの生命を呪った。

互いの世界が崩壊した時
男と女は離れる事にした。

男は女から生まれた【それ】を引き取り
女は自分を愛す【人形】を作る。

美しい【物】のために……。

運命(全て)は走りだした。

――――終幕へと。

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