涙の夜は語る
過ぎる日々
「ねぇ、ちょっと聞いてんの!?ルイ」

「……ぇ…ごめん、ちょっとぼーっとしてた……」

「あんた最近そればっかりー」

「ごめんってば里奈、私ってばちょっと疲れすぎ~みたいな?」

「みたいな?って今時言わねー、古っ、ルイってば古っ!」

ぎゃはははと大口を開けて大笑いする里奈をみて
私も小さく笑った。

ファーストフードの窓際の席に私たちはいつものようにいた。
いつもの放課後。
いつもの仲間。(といっても里奈だけだけど…。)
小さい頃からの引っ込み思案な性格が邪魔して
友達作りが上手くない私は
いつも学校で一人か二人仲のいい友達ができればいい方。
私が里奈と仲良くなったのは高校三年の夏。
もうちょっと早く出会えればよかったのにね、私たち。
そう言いながら笑ったのはつい一週間前の放課後。
こうしてファーストフードで話をしながらぼーっとしている時だった。

「A組の佐久間がさー」

「里奈ってばまた佐久間の話?」

「だってさ、超かっこいいんだよ」

「ふーん。」

興味がない返事をする私に熱く佐久間話をする里奈。
佐久間とは同学年のイケメン。
ジャニーズ系だと入学式のときから大騒ぎされて
先輩や後輩、同学年にも大人気。
勉強はそこそこ。スポーツばっちり。
プラス大きなポイントを占める「顔」が揃った
【神】的存在。
でも残念なことはそいつが彼女をとっかえひっかえしてること。

「里奈、あいつまた彼女変えたってきいたよ」

「まぁね、佐久間ぐらいのオトコだったらそれぐらい当たり前じゃん」

(ってなんでそこで公定なんだよ…)

私は里奈の佐久間好きに少しうんざりしながら
いつも繰り広げられる話を聞いていた。
でも里奈の佐久間の話をするときの顔は
ちょっとだけ、すきだった。


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