涙の夜は語る
イケメン喰いで有名の柳沢りこ。
どんな男もとっかえひっかえ。
見た目がめちゃくちゃ可愛いだけにわかる気もするが
男の騙され易さに正直ウンザリする。
今彼は確か里奈の好きな佐久間だった。

(確か二人とも雑誌の読者モデルやっていてそれで……)

そんな事を考えていたら苛々した声で柳沢がまくし立ててきた。

「何で篠崎さんの名前を工藤君が聞くの?」

「……知らない」

本当に知らない、これ以上言い様が無い。

「あのさぁ、柳沢さんて確か佐久間君のカノジョだったよね」

「ちょっと、里奈」

「だとしたら、工藤君になんの用があんの?」

私の制止の声も聞かずに里奈は柳沢に食って掛る

「何それ、用があるかどうかなんてあんたに関係無いじゃん。」

「工藤君は、あたしらに用があって話しかけてきたの。あんたに関係ないでしょ」

里奈はそう言うと私に向って勝ったと言わんばかりの目線を投げてくる。
柳沢の方は余裕たっぷりな意地悪な笑顔を湛えていた。

「明日怖い目みるよ」

まるで悪役のような台詞を柳沢は言うとその場を去った。

(望むとこだ、ばーか!)

その後ろ姿に向って柳沢に向かって小声で里奈は毒づいた。

「あーもう!何なのアイツ」

「ほっとこうよ里奈」

「佐久間の次は工藤ってさー本当に有り得ない!
 大体男子は何であんなのに騙されんの」

「可愛いからじゃん?」

「って何であんたはそんなに冷めてんのよ!」

「あははは、ごめんごめん」

「もー、元はといえばルイがいけないんだよー」

恨めしい顔でニヤニヤしている里奈と私は一緒に笑った。
そんなやり取りをしていて私はすっかり忘れていたのだ。
ーーーー後悔するよ。
誰かに囁かれたような気がした。
でも私の時間は止まらない。
いつものように私と里奈は放課後まで過ごして
じゃあね、と別れた。
『また、明日。』


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