jam
桃色
「ねぇ、ねぇ!!」
「ンンッ?」
「悠太くんはどう?」
親友の芽依が卒業
アルバムを指差した。
蒸し暑いモワモワとした
空気が漂う、私の大嫌いな季節。
―夏―
汗ばむ手をズボンで拭い、
壊れモノを扱うような
手つきで、
卒業アルバムのツルツルした
表面に触れる。
「えぇ〜!!」
「好みじゃないよ〜」
まだ1枚目の
卒業アルバムを貰った
ばかりの歳だった。
私には好きなヒトがいない。
欲しくない訳ぢゃない。
いや、どっちかって
言うと…欲しい。
だけど、
中学校の生徒は小学校
からずっと一緒だし。
新しい恋なんて出来ない。
そう思っていたんだ。
そんな私にナゼか
芽依が好きなヒトを
つくろうと頑張ってる。
「そっかぁ。」
芽依が顔をしかめ
ながら言った。
私は正直思っていた。
こんなコトで誰かを
好きになるなんて…。
ありえないでしょ。
「あ、じゃあ翼くんは??」
芽依がまた訊いてきた。
芽依は明るい性格で
立ち直りも早い。
私はいつもネガティブ
に考えてしまうから
羨ましくもある。
「え、ぅーん…。」
早く決めてしまわないと
永遠に続くような気がした
私は返事に悩んでいた。
そんな私を見て、
芽依は勘違いをしたらしく
妙に"翼くん゙を
すすめてきた。
翼くんは
スポーツ万能で
スラッとした体型の
男の子。
いかにも
モテそうな感じ。
私は何を考えているのか
読めないのが苦手だった。
苦手というか…、
なんか恐いんだよね。
「翼くんの好きなヒト誰だか知ってる?」
笑いながら
芽依が訊いてきた。
少し考えてみたケド
まったく分からない。
「知らないよ。誰??」
芽依はさっき以上に
笑みを浮かべた。