初めてのキス
「え?・・」

「自分が褒められたと思っただろ?」

「・・信州味噌の方だった?(^^ゞ」

「いいや・・褒めたのではなく、冷めた状態の味噌汁もウマイってことを発見した俺自身の喜びさ」

「はぁ・・」

「君が心を病むのは、いいことも悪いことも、自分自身に結びつけるから・・。もし、冷めた味噌汁がマズイとしても、それは君のせいじゃない。 いいかい、冷えた味噌汁を飲んでマズイと言ったら、それは君が作った味噌汁がマズイんじゃない。冷えたからだ」

「また細かいコト言ってるわね(^^ゞ喜んでソンしちゃったわ(^^)じゃ、熱い味噌汁が美味しくなかったら、どうなのよ?」

「それは、熱いからマズイのだ!君のせいじゃないのさ~」

春樹は優しく微笑んだ。

「何が言いたいの?」

「わからん。マズイ原因は他にもある。作り手だけの問題じゃない」

エミは爆笑した。

しかし、内心は春樹に感謝していた。

<良くも悪くも、君のせいじゃない>

この言葉は、心の病を経験した者への特効薬だ。

「君が料理をしながら味をみるだろ?俺も味見しながら患者に薬を与えるのさ。
 中には猫舌もいる。一生、熱い味噌汁を飲めない人もいるのさ。俺は両方飲める。判断は偏らない!」

エミはもうその場にはいなかった。毎度おなじみの春樹の講釈が始まったからだ。

もう幾百回となく聞かされていたのだ。すこし、春樹も病的ではあった。

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