初めてのキス
春樹「え?そういう計算なの!じゃあ、来年は3万?なんか皆勤継続賞みたいだなー。あはは」

カオル「付き合いが続けばね。自慢じゃないけど、あたし・・人に3万以上のプレセントをしたことがなくてよ。ふふふ」

春樹「そっか、解るような気がする・・性同一性障害・・なかなか理解されないよなぁ」

カオル「そういうことじゃないわよ。飽きない人間と巡り会えないからよ。男とか女とか、そんなこと、あたしは問題にしてないの。感性が合えばいいのよ。人間だろーが、幽霊だろーが、地球外生物だろーが、ね」

そう言って、カオルは春樹を見あげるようにして笑った。が、カオルが見たのは春樹だけではなかった。

カオルは春樹の肩越しから、対面にある2階のカフェテラスを見た。窓辺はミラータイプのレースシェードが降ろされ、外が明るいうちは中の様子は見えなかったが、カオルはその右端の窓辺に注目した。

少しだけ、シェードがたくし上げられている。二人の様子を伺う一人の老人の顔が見えた。

カオルは、春樹に気づかれぬよう、瞬時に老人を視とめ、合図をおくった。
(先生、必ずや、私・・)
老人は深く頷き、ティーカップをカオルに掲げるように見せたあと、ゆっくりとシェードを下ろした。

春樹は考えていた・・感性の合う相手・・

それが<異性>だろうと、<同性>だろうと、<おかま>だろうと<おなべ>だろう

と、そういう相手に出会えたこと!それが大切であり、一生大切にしていかなければい

けない宝物なのかもしれないと・・ちょっとくらい喧嘩したって、意地はったって、そ

れが二人の付き合いで、お互いに表面では強がっていたって心の底では認め合ってい

る。言い過ぎることだってあるさ、人間だもの。ただ、その許せる気持ちが、深海魚の

いるような場所で、長い間いつまでも落ち着いてブラックコーヒーを飲みながらショッ

ポで一服してるかもしれない。でも再び、ひょっこり水面に顔をだせば

「よおっ(#^.^#)」

屈託の無い笑顔で笑い合える・・

そういう相手・・

それが俺にとって<カオル>なのか・・

遠くのほうから声がしている

「・・はるき ・はるき 春樹!! こらー」

「うわ!?」
< 9 / 24 >

この作品をシェア

pagetop