鬼畜王子の飼育方法
「…で。なんでここなんですか」
「何でって、落ちつくから? あ、宮下さん水おかわり!」
手を上げて声を上げる志季。
私はそんな志季を見て思わず溜め息をついた。
そう。
ここは、私たちのバイト先。
見慣れた店内なのに、お客として改めて来てみると、だいぶ雰囲気が違って見える。
新鮮というか、何というか。
チラリとキッチンに目をやると、宮下さんが忙しそうにお冷やをついでいるところだった。
「…さっきは散々お店のことけなしてたくせに」
ポソッと呟く。
「…あー。だからあれは、しょうがなかったんだよ」
「何がですか」
「ああでも言わないと、アイツら絶対来たがるだろ?」
「別に来たっていいじゃないですか。オレンジ先輩は親友なんでしょ?夏生だって私の働いてる場所が見たいだけだろうし…」
そこまで頑なに拒む意味が分からないよ……。