鬼畜王子の飼育方法
何やらブツブツ呟きながら、宮下さんがキッチンに戻っていく。
その背中を見送ってから、志季は静かに口を開いた。
「…別に、偽ってるつもりはないんだ。ただ…」
「ただ?」
「壁がある」
………壁?
「昔からそうだったんだよ。他人との間に壁を作る癖があって…多分その壁が、知らないうちに態度に現れてるんだろうな」
「……」
なんとなく、だけど。
分かる気がする。
だってほら、みんなだってそうでしょう?
家と外で態度が違ったり、
人を見分けて態度を変えたり、
目上の人には小さくなったり、
背伸びしたり、
謙虚になってみたり、
二重人格とか
八方美人とか
人はそれを悪く捉えがちだけど、きっとそれは誰もが当たり前に持っているモノ。
志季の場合はそれが極端に出てしまっているだけで、本当は私たちと何ら変わりはないんだ。