鬼畜王子の飼育方法
「何でいるんですか!」
びっくりした。
心臓が止まるかと思った。
見覚えのあるオレンジの自転車に跨がり、どんな表情をしているかと思えばいつも通りの仏頂面。
「…彼氏が彼女を迎えに来て、何が悪い?」
そう平然と答える姿を見て、あぁ私はこの人の彼女になったのだと改めて思い知らされた。
彼女といっても、そこには真実もへったくれもない、ただの恋人ごっこに過ぎないわけだけど。
いや、ちょっと待て。
それ以前に……
「何で私の家知ってるんですか?志季先輩、ストーカー?」
私の言葉に、志季の眉がピクッと反応する。
「誰がストーカーだ、コラ。前送ってきたときに覚えたんだよ」
「あぁ」
そう言われてみれば、前にすぐそこの協会まで送ってもらったんだっけ。
「そ、それは失礼しました」
仕方なく頭を下げる。
「…んじゃ、行くぞ」
「え、行くって、」
「後ろ。早く乗れよ」
えぇぇー!!
乗るの?また後ろに?
いつかの二人乗りの記憶が蘇り、顔に熱が集まっていく。