鬼畜王子の飼育方法
「鞄」
「へ…」
「貸して」
志季は、戸惑っている私の手から鞄を取ると、それを素早く自転車の前籠に入れた。
あ、身軽。
…じゃなくて!
どうしよう。
2回目なのに緊張するよ。
「早く乗れよ」
「あ、はい…」
緊張のせいか思わず声を上擦らせながら、おそるおそる志季の背後に跨がる。
太ももに車輪の金具が当たって、ひんやりと冷たい。
「よし。ちゃんと掴まっとけよ」
「は、はい」
遠慮がちに志季のお腹に手を回すと同時に、自転車が動き出す。
早朝の清々しい風を満喫する余裕すらなく、私の心臓は終始ドキドキしっぱなしだった。