鬼畜王子の飼育方法




「…あの、先輩」


四方八方から視線が集まる校門の真ん中。

おそるおそる、志季の顔を見上げた。


「あ?」

「手…そろそろ放しませんか?」


みんな見てるし、と小さく呟く私に、しれっとした態度で志季は言う。


「何で?」

「だって、目立つじゃないですか…」


それに何より、私の心臓が持ちません!

そう言いたかったけど、どうせからかわれるのが目に見えているから黙っていた。


「お前なぁ、見せつけてやるぐらいの気構えでいなきゃダメだろ」

「…でも、」

「じゃなきゃ、女避けの意味ねーし」



女避け──……



そうだ。


私は所詮、志季にとっては都合の良い玩具も同然。

志季にとって、女避けになるなら相手は誰でも良いわけで─……

たまたまバイト先が同じで素性を知られている私が、単に手っ取り早かっただけの話。

そう。

この行為に“気持ち”なんて無いんだ。



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