鬼畜王子の飼育方法
今になって思う。
どうしてあの日、頷いてしまったのか。
繋いだこの手も、死んじゃいそうなぐらいドキドキするのに、放した瞬間に残るのは虚しさだけだ。
ほんと…何やってんだ、自分。
「…おい」
自己嫌悪に陥っていた私を、志季の声が再び現実に引き戻す。
「へ?」
「へ?じゃねー!ちゃんと話聞いとけアホ!」
「聞いてますよ」
「どうだか。どうせ上から下へ聞き流してんだろ」
上から下…?
「右から左の間違えじゃないでしょうか」
「なっ…」
久々のツッコミに、志季の顔がみるみる赤くなっていく。
その姿がなんだか可笑しくてつい頬が緩んでしまった。
「テメ…笑ってんじゃねー!しばくぞ!」
「はいはい。で、話の続きは?」
我ながら、だいぶ成長したと思う。
今までは散々悩まされていた志季の暴言も悪態も、今は余裕で受け流すことができる。