鬼畜王子の飼育方法
「…お昼、食べないんですか」
早る鼓動に困惑しつつも、平然を装って問いかけた。
「ん?あー、急いでたから買うの忘れてたわ。お前はそれ、食わねぇの?」
志季が、私の手の中にあるお弁当包みを指差した。
──ドクン、ドクン。
心臓がうるさい。
「…あの、良かったら食べてください」
「……へ?」
キョトン、とした表情で、志季は小さく声を上げた。
「…だって、お前のが」
「志季先輩の分もあるんです!」
…やっとの思いで口にした。
そう。
万が一のことを考えて、朝早起きして作っちゃったんだよね。
志季が自分のお昼を用意していたら、渡さないつもりでいたのに…。
こんなこと、(本当の)彼女でもないのに図々しいかな。
どうしよう。
今になって恥ずかしくなってきちゃったよ。
穴があったら入りたい。