鬼畜王子の飼育方法
「……あ、好き」
トクン。
胸がときめくとは、まさにこのことだろう。
小さく呟いた志季の横顔に、心臓が大きく脈打つ。
「なんか予想外。お前料理うまいんだ」
なんて言いながら、お箸を動かす手を止めない。
何だろう──…
照れ臭いような、
くすぐったいような、
とにかく嬉しい気持ち。
まるで本当の彼氏と彼女になったようで、私は幸せなひとときを噛み締めていた。
「よし、決まり!」
ふいに、志季が箸を休めて顔を上げる。
「明日からも弁当作ってよ」
「えっ」
「何だよ。カレカノなんだからいいだろ?」
「…べ、別にどうしてもって言うなら作ってあげてもいいですけど」
なんて言いつつも、内心手を挙げて喜びたいくらい嬉しくて仕方なかった。
「何それ。今流行りのツンデレキャラか」
志季の頬が緩む。
その優しい眼差しに、胸がいっぱいになる。
──…どうしよう。
悔しいけど、
ムカつくけど、
いろんな志季を見れば見るほど、私はこの人に惹かれてしまう気がする───。