鬼畜王子の飼育方法



閉じられている瞳を良いことに、思う存分志季の顔を堪能する。


これぞまさに視姦というヤツだ。



バイト先で初めて会ったあの瞬間から、綺麗な人だとは思っていたけど─…


改めて近くで見ると、その整いすぎた端正な顔立ちに溜め息が漏れるほどだ。


閉じた瞳を縁取る長い睫毛は、どこか儚げで…

そっと触れてみたい衝動に駆られたけれど、慌ててそれを飲み込んだ。



──…黙っていれば、本当の王子様なんだけどなぁ。

口を開けば意地悪と悪態ばかりの志季でも、寝顔だけはこんなに可愛いんだ。


すっかり安心しきっているのか、無防備に開かれた唇から規則正しい寝息が聞こえ始める。


志季のこんな姿、なかなかレアかもしれない。


自分だけに見せてくれるそんな表情が堪らなく嬉しくて。

先程から頬の緩みが止まらない。



時が止まってしまえば良いのに


本気でそんなことを思ってしまった。




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