鬼畜王子の飼育方法
志季が教室に向かってしばらく経った頃だった。
ポケットの中の携帯が、ブルブルと振動し着信を知らせる。
「はぁい?」
特に発信者を確認しないまま通話ボタンを押したのが間違いだった。
『オラアァァァァァア!!!』
「ひィっ!」
電話に出た途端耳をついた、けたたましい叫び声。
というか、怒鳴り声?
鼓膜が破れそうなほどの大声の主は、私の返事を待たずして更に言葉を続ける。
『美希ー!オメー今どこにいるんだゴルァァァア!』
「…ちょ、と、とにかく落ちついてよ。夏生」
そうだ。
こんな剣幕を撒き散らすのは、彼女くらいしかいない。
『大変なことになってんだよ!今さっき、志季先輩が教室に来たの!』
「…あー」
『あー、じゃないよ!美希は授業に出ないわ志季先輩がアンタの代わりに鞄取りに来るわで、みんな大騒ぎしてるよ!?』
…やっぱり騒ぎになってたか。
なんとなく予想はついてたけど。