鬼畜王子の飼育方法
「おい、何一人でニヤついてんだよ」
「!?」
ふいに背後から聞こえた声に振り向くと。
「…おまたせ」
鞄を二つ肩にかけた志季が、ふわりと微笑む。
西日を浴びたその立ち姿がすごく綺麗で、ついついウットリと眺めてしまった。
「おーい?帰んぞ」
「は、はい!あ、鞄ありがとうございます!」
慌てて両手を差し出す。
けれど志季は、私の手を軽く交わすと、
「いや、いいよ。俺が持つから」
そう言ってくるりと背中を向けてしまった。
「えぇ!いいですよ。自分で持てますって」
「俺が持つっつったら持つんだよ!その代わり…」
ほら、と差し出された左手に、思わず息を飲む。
こ…これはつまり。
手を繋げ、と?
「つ、繋がなきゃダメですか?」
「繋がなきゃダメ」
…即答かい。
ドクドクと脈打つ心音を抑えるように、おそるおそる右手を差し出す。
「っ!」
志季はすかさず私の手を掴むと、慣れたようにその指を絡め始めた。