鬼畜王子の飼育方法


……こ、これって。


つまり、その、


いわゆる“恋人繋ぎ”というヤツですよね?



──あんな暑苦しい繋ぎ方をするのは、バカップルぐらいだ。


ずっとそう思ってた。


だけど今思えば、あれはただの妬みだったのかもしれない。




──だって、知らなかった。



絡めた指から伝わる温度。

直に感じる人のぬくもり。


その相手が好きな人なら尚更心地よくて。


『幸せ』


今の気持ちを表現するなら、この一言がピッタリだ。



「前から思ってたんだけどさ、お前って手ェ小さいよな」


「そ、そぉですか?」


やばっ。

緊張のせいで声が裏返る。


「グラス1つ持つのがやっとだろ?俺なんか3つ持てるぜ?」


「それ自慢になりませんから!」


他愛ない言葉のやりとりでも、指を通して振動が伝わってくる─…


そんな些細なことが、堪らなく嬉しかったんだ。




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