鬼畜王子の飼育方法
オレンジ色の空の下。
繋いでいた手から、今度は志季のお腹に手を回して。
いつもの通学路を、自転車で颯爽とかけ抜ける。
「……」
なんでかな。
目の前にある志季の広い背中に、胸がキュンと切なくなる。
近くにいればいるほど、自分の存在が分からなくなるんだ。
志季にとって、私は何──?
いつまで恋人ごっこを続けてればいいの──?
好きなんだよ。
本気でアンタに惚れちゃってるんだよ。
だからこそ──…辛くなる。
志季のくれる言葉は、どこからが嘘でどこまでが本当なの?
私に触れる大きな手も
時々見せる無邪気な笑顔も
優しい言葉も
すべてが作りモノだなんて思いたくないよ…。