鬼畜王子の飼育方法
おずおずと足を踏み入れ、僅かに距離をとる形でお父さんの隣へ腰を下ろす。
お父さんが何やら私を紹介しているようだけど、さっぱり耳に入らない。
時折聞こえる、クスクスというソプラノだけが、私の耳に敏感に届いていた。
「──…美希」
「え、あ、はい!」
ふと名前を呼ばれ、慌てて顔をあげると。
小さく息を吸ったかと思えば、お父さんは意を決したように口を開いた。
「単刀直入に言う。お父さんな、再婚しようと思ってるんだ」
「………」
意外にも、驚きは少なかった。
既に舞の口から聞いていたのもあったし、健太の目撃情報からも予想は出来ていたことだったから。
それよりも、
「…本気なの?」
お父さんの真意が知りたかった。
だって、お父さん、言ってた。
お通夜の夜。
お母さんの亡骸に向かって。
『俺の女房は、生涯でお前だけだよ』
って────。
その言葉を聞いて、私はお父さんが大好きになったんだよ?