鬼畜王子の飼育方法
意地悪にもとれる私の精一杯の抵抗に、お父さんの眉が下がったのが分かった。
ねぇ。
どうしてそんな顔するの?
泣きたいのは私の方だよ。
「…私じゃ、依子さんの代わりになれませんか?」
「え、」
その声にハッとして顔を上げる。
望さんは──強い眼差しで、私を見ていた。
“代わりになる”
それがどういう意味なのか、この人はちゃんと分かってるんだろうか?
どうしてだろう。
イライラする。
お腹から沸き起こる黒い感情。
「…でください」
「え?」
「安易にお母さんの名前を出さないでください!お母さんの足元にも及ばない癖に!」
──我ながら、酷いなと思った。
けれど、後悔してもそれは後の祭りで。
「──美希!」
パシン!
気づけば、お父さんの平手が頬を叩いた後だった。