鬼畜王子の飼育方法
「さて、と」
洗い終わったモップを用具入れにしまいながら、捲っていたブラウスの袖を下ろす。
「今日も研修なんだっけ?」
「うん。遅刻したらまた志季…先輩に怒られるから急がないと」
……てゆうか。
志季はなんで毎日毎日遅刻せずに来れるんだろう。
やっぱ、あれ?
美少年はパーフェクト主義ってヤツですか?
「いいなぁ。私もそこで働こうかなぁ」
ふと、夏生が呟く。
「そうだよ。夏生も一緒に働こうよ!」
「あー…でも駄目だわ。ウチ親が厳しいから。美希が羨まし…」
言いかけて、夏生はハッとしたように口を押さえた。
「美希、ごめん…」
「いいよいいよ。気にしてないし?」
そう言って笑顔を作ると、夏生はホッとしたように頬を緩めた。
──…こうやって気を遣わせちゃうくらいなら、最初から言わなければ良かったのかな。
お母さんのこと。
なんだか、夏生に対して申し訳ない気持ちになってしまった。