鬼畜王子の飼育方法
志季はその後もダラダラと文句を言っては、なかなか電話を切る気配を見せない。
一体何の為にかけてきたんだろ?
そんなことを考えていると。
「…クシュッ」
身体がすっかり冷えきっていたせいか、ふいにくしゃみが飛び出してしまった。
もちろん、それに志季が気づかないはずが無く。
『…お前、もしかして今外?』
察しが良いというか、志季は変なところで勘が鋭い。
思わず泣きついてしまいたくなったけど、余計な心配をかけるわけにはいかない。
「…い、家ですよ?」
だから、つい、嘘をついてしまったんだ。
『相澤』
「はい」
『どこにいる?』
「……ッ!」
どうしてだろう。
なんで志季には……分かっちゃうんだろう。
精一杯の嘘も、強がりも。
まるで透明硝子のように、志季にはお見通しなんだ……。
「…ふぇっ」
そう思ったら、ふいに志季が恋しくなって。
なんだか無性に会いたくなって。
大量の涙が頬を伝う。