鬼畜王子の飼育方法
『とりあえず落ち着け。どこに居る?』
「…きっ…近所の、公園…」
『了解。お前そこから一歩も動くなよ。動いたら殺すから』
──ブツッ。
一方的に言い捨てたと思ったら、耳に残るのは無機質な機械音のみ。
携帯をギュッと胸に抱きしめ、私はベンチに踞った。
──志季を困らせたいわけじゃない。
なのに、やっぱり会いたい気持ちが止められなくて。
ワガママと思われてもいい。
甘えんぼでも、泣き虫でもいい。
アンタに──…
会いたいんだよ……。
「相澤!!」
5分も経たないうちに、愛しい人は私の前に現れた。
薄暗い視界。
その中に見覚えのある漆黒の黒髪が目に入った瞬間、それまで堪えていたものがいっきに溢れだしてくる。
「…志季ぃ──」
思わず呼び捨てにしていることすら気づかずに、私は志季の胸に飛び込んでいた。
「…積極的すぎ」
そう言って笑いながらも、志季は優しく頭を撫でてくれる。
「うわぁぁぁん!」
志季のシャツに顔を埋めて、私は子供みたいに泣き続けた。
「…よしよし」
まるで小さい子をあやすように、志季は私の背中をポンポンと叩いてくれて。
なんだか凄く…安心するんだ。
厚い胸板がこんなに頼もしいなんて、知らなかったよ。