鬼畜王子の飼育方法


「……はー…」


ほどよく熱い湯船に身を沈めて、小さく溜め息をはく。

すっかり冷えきっていた体が、芯から温かくなって。

心地よい──…


他人の家なのに、どうしてこんなに落ち着くんだろう。


両手で浴槽のお湯をすくいながら、ふと、思い出す。


みんな…心配してるかな。


この時間なら、さすがに愛梨たちも帰宅してるだろうし…。


あの時はつい感情に任せて飛び出してきたものの。

小さい妹や弟たちを残して家を飛び出してしまったことだけが、心残りだった。








「…お風呂、ありがとうございました」


志季の服は、予想以上に大きかった。

袖も裾も、拳3つ分くらい余ってしまう程。

それでも、志季のにおいが至るところに染み付いて──ドキドキした。



「…ん?あぁ、出たか」


ソファーでくつろいでいた志季が、視線をテレビから私に移した。


「って、やっぱデカすぎたか」


私の格好を見るなり、小さく笑い出す志季。


「着てるっつーより、着られてる、みたいな?」


「志季先輩が大きすぎるんですって!」


なんて、身長154cmの私が言ったところで何の説得力も無いんだけど。



< 215 / 294 >

この作品をシェア

pagetop