鬼畜王子の飼育方法
「……はー…」
ほどよく熱い湯船に身を沈めて、小さく溜め息をはく。
すっかり冷えきっていた体が、芯から温かくなって。
心地よい──…
他人の家なのに、どうしてこんなに落ち着くんだろう。
両手で浴槽のお湯をすくいながら、ふと、思い出す。
みんな…心配してるかな。
この時間なら、さすがに愛梨たちも帰宅してるだろうし…。
あの時はつい感情に任せて飛び出してきたものの。
小さい妹や弟たちを残して家を飛び出してしまったことだけが、心残りだった。
「…お風呂、ありがとうございました」
志季の服は、予想以上に大きかった。
袖も裾も、拳3つ分くらい余ってしまう程。
それでも、志季のにおいが至るところに染み付いて──ドキドキした。
「…ん?あぁ、出たか」
ソファーでくつろいでいた志季が、視線をテレビから私に移した。
「って、やっぱデカすぎたか」
私の格好を見るなり、小さく笑い出す志季。
「着てるっつーより、着られてる、みたいな?」
「志季先輩が大きすぎるんですって!」
なんて、身長154cmの私が言ったところで何の説得力も無いんだけど。