鬼畜王子の飼育方法
「─……辛かったな」
「…ふ、うっ」
気づけば、私の目からは大粒の涙が溢れていた。
話しているうちに─…蘇ってきちゃったんだ。
お母さんとの、いろんな思い出。
中学に上がった頃から、勉強に対してやけに干渉してくるようになったお母さん。
その存在が疎ましくて、辛くあたった時期もあった。
それでも。
決して私を見捨てずに、最後の最後まで叱ってくれたお母さん。
ねぇ、お母さん?
私、勉強頑張ったんだよ。
今まで苦手だった数学も、今では満点も取れるようになった。
──…なのに。
見せることが出来ないんだ。
誉めてほしかった。
『頑張ったね』
『偉いね』
いつもの優しい声で、私の頭を撫でてほしかった。
冷たい写真立ての中で、変わらぬ笑顔を見せるお母さん。
その手に触れることも、
抱きしめてもらうことも、
もう、出来ないんだ…………。
「…私、本当はまだ、沢山甘えたかった。お母さんに、抱きしめてもらいたかった」
「…うん」
グッと、志季が私の背中を抱き寄せて。
志季の肩にもたれるようにして、私は泣き続けた。
志季のぬくもりが、
暖かくて。
心地良くて。
少しだけ、お母さんのそれに似ているような気がしたんだ──…。