鬼畜王子の飼育方法
「…俺、思うんだけどさ」
ふいに、志季が口を開く。
「親父さん。そうゆうお前のことも考えた結果なんじゃねーの?」
「え?」
「多分だけど、少しでもお前の負担を減らしてやりたかったんじゃねぇかな。少なくとも、恋愛感情だけで再婚するは思えないし」
───そういえば。
ふと、先程のリビングでの会話が脳裏に蘇る。
『…彼女は、子供たちのことも、全て面倒を見ると言ってくれたんだ』
『スナックも辞めて、お昼のパートに出ようと思っています』
───あれは。
そうゆう意味だったの?
お父さん──……
目頭がツンと熱くなる。
「志季先輩、私…、酷いことした……」
お父さんに、
あの人に、
私、何て言った───?
言葉の真意を確めもせず。
私は『再婚』という言葉だけにこだわって、突っ掛かって。
その決断をするまでに、お父さんがどれほど頭を悩ませたか、なんて。
私…ちっとも考えなかった。
「最悪ですよね、私」
「相澤…」
「そりゃあ、殴るわ…」
まだ僅かに痛みの残る右頬に、そっと手をあてる。
お父さん。
どんな思いで、私に手をあげた?