鬼畜王子の飼育方法



「…俺、思うんだけどさ」


ふいに、志季が口を開く。


「親父さん。そうゆうお前のことも考えた結果なんじゃねーの?」

「え?」

「多分だけど、少しでもお前の負担を減らしてやりたかったんじゃねぇかな。少なくとも、恋愛感情だけで再婚するは思えないし」



───そういえば。


ふと、先程のリビングでの会話が脳裏に蘇る。



『…彼女は、子供たちのことも、全て面倒を見ると言ってくれたんだ』


『スナックも辞めて、お昼のパートに出ようと思っています』



───あれは。


そうゆう意味だったの?

お父さん──……




目頭がツンと熱くなる。


「志季先輩、私…、酷いことした……」


お父さんに、

あの人に、


私、何て言った───?


言葉の真意を確めもせず。

私は『再婚』という言葉だけにこだわって、突っ掛かって。


その決断をするまでに、お父さんがどれほど頭を悩ませたか、なんて。

私…ちっとも考えなかった。



「最悪ですよね、私」

「相澤…」

「そりゃあ、殴るわ…」


まだ僅かに痛みの残る右頬に、そっと手をあてる。


お父さん。

どんな思いで、私に手をあげた?



< 220 / 294 >

この作品をシェア

pagetop