鬼畜王子の飼育方法
ふいに名前を呼ばれ、ドキッとしながら振り返る。
声をかけてきたのは、その集団の中の一人…亜弥ちゃんだった。
亜弥ちゃんは、夏生曰く筋金入りの志季ファンとして有名らしい。
「美希ちゃん、今ちょっと話せたりする?聞きたいことがあって」
「……あ、うん」
亜弥ちゃんの言葉は攻撃的でも無ければ、いつものようにおちゃらけてもいない。
逃げるわけには…いかないよね。
心配そうにあたふたする夏生に「大丈夫」と目配せして、私は亜弥ちゃんの小さな背中を追った。
人気の無い体育倉庫裏──…かと思えば、亜弥ちゃんが連れてきたのは人で賑わう食堂だった。
意外な場所の選択に、目を丸くしていると。
「…美希ちゃん。私ね、どうしても聞いて欲しいことがあって」
「…へ、」
聞きたいこと、じゃなくて?
唖然とする私に、亜弥ちゃんは小さく息を吸ったあと。
思いきったように口を開いた。
「私ね、桜沢先輩のことが好きなの!!」