鬼畜王子の飼育方法
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「え!何これ!」
お弁当箱を開けた瞬間、志季は大きな目を一層大きく見開いて声を上げた。
「それはその…お礼って言うか」
「にしては豪華すぎねぇ?」
…──頑張ったもん。
朝、2時間も早く起きて作った力作だった。
「玉子焼き、やっぱ旨いな」
満足そうに頬張る志季の横で、私はギュッとスカートを握りしめた。
言おうか…
言うまいか…
さっきから、今朝の亜弥ちゃんの言葉がグルグルと頭の中を駆け巡るんだ。
「お前、何とも無い?」
ふいに、志季が問いかけてくる。
「へ?」
「いや。今朝迎え行かなかったからさ」
「…あ、はい。特に」
「ならいいけど。何かあったらすぐ言えよ?なんせ俺様は、相澤の彼氏兼ボディガードですから」
「はは…何ちゃっかり俺様発言してるんですか…」
自分で言うのも難だけど、今日の私のツッコミはイマイチ不調だ。
笑いたいのに笑えない。
顔がひきつってしまう。
志季は変に勘が鋭いから、気づかれないといいんだけど──…
「…やっぱ、変」
「へ!?」
思わず間抜けな声が漏れる。
だって。
言ったそばから、志季が怪訝そうな顔で私を見ていたから。