鬼畜王子の飼育方法
ゆっくり、声のしたほうに視線を移す。
「……亜弥ちゃん」
「み、美希ちゃん!」
ハッとしたように口を押さえて、亜弥ちゃんが立ち止まる。
多分、志季の背中で私の姿が見えていなかったのだろう。
罰の悪そうな表情で、その場に立ち尽くしている。
「え、なに。相澤の友達?」
「あ、はい。同じクラスの……」
平然を装いつつも、頭の中はパニック状態だ。
だって、
まさか、彼女がこんなに早く行動を起こすなんて思いもしなかったから。
「ああああの!私、先に教室に戻りますねっ」
散らばったお弁当箱を慌ててかけ集め、鞄片手に立ち上がる。
これ以上、ここにいてはいけない気がしたんだ。
「え、おい、相澤─…」
「美希ちゃん!?」
二人の制止を無視し、私は逃げるようにその場を離れた。