鬼畜王子の飼育方法
「……何で、居るんですか」
「そうゆうお前は何で来たの?」
薄暗い店内。
その、一番奥の席に、志季は座っていた。
「来なかったらどうするつもりだったんですか?」
「さぁ?適当に朝迎えてたかもなー」
ハハッ、と小さく笑う志季。
──居ないと思って来ちゃう私も馬鹿だけど。
それをずっと待ってるアンタも相当な馬鹿だよ。
「…あのメール、何」
静まり返った店内に、志季の低い声だけが響く。
「…メール…」
それは、私が家に着いてすぐ、志季に送ったメールのことを言っているんだろう。
「サヨナラって何あれ。意味わかんねーんだけど」
「…あれ、は…」
ギュッと、唇を噛み締めた。
そう。
あれは─…あのメールは。
私が下した、苦渋の決断。
この関係を断ち切る為の、最後の手段だった。