鬼畜王子の飼育方法
「……分かった」
え?
何が、分かったなの?
「それだけ確認しときたかっただけだから。今までごめんな」
───ポン。
志季は私の頭に、そっと手を乗せてそう言った。
「………」
言葉が出なくて、愕然とする。
そんな私を残して。
志季は静かに、お店から出て行った。
「…待っ、」
引き止めたいのに、声が出ない。
引き止めたところでどうなる?
先にサヨナラを告げたのは私のほうでしょ──?
───ペタン。
成す術も無く。
冷たい床に座り込む。
───これで良かったんだよね?
もうみんなを騙さなくて済むんだよ?
偽りの関係に苦しまずに済むんだよ?
すべて、解決じゃん。
万歳モノじゃん。
なのに───……
「志季…ぃ……」
どうしてこんなに悲しいの……?