鬼畜王子の飼育方法
聞き覚えのある名前と、
聞き慣れたその声に。
ハッとして体を起こす。
「薬、あるかなぁ」
「平気だよ。寝てりゃー治る…」
ドクンドクンと、心臓が煩い。
間違いない。
この声は─…志季の声だ。
「ちょうどベッドも空いてるし、横になったら?」
「ん。適当に寝とくから、由香ちゃんは戻っていいよ」
───ズキン。
志季の口から出た知らない女の子の名前に、胸の奥が痛んだ。
私とは違って、優しい言葉で話しかける志季。
「由香もサボっちゃおうかな」
「なに言ってんの。保健委員がそんなじゃ駄目だよ」
嫌だ…嫌だ……
聞きたくないよ