鬼畜王子の飼育方法
……………。
そして、
少しの沈黙のあと。
「………違うよ」
小さな声で、志季はそう呟いた。
「…あ、え、そうなの?」
私と志季を交互に見ながら、明らかに動揺している彼女。
それもそのはず。
私はただ黙って、溢れる涙を必死で堪えていたのだから。
「でもさぁ、つきあってたんでしょ?二人…」
「由香ちゃん」
「え?」
「俺、眠いからさ。教室、戻りなよ」
「……あ、うん分かった。じゃあ、また来るね」
何かを感じとったのか、バツの悪そうな顔で立ち去る由香さん。
その後ろ姿を呆然と眺めながら、ふと、考える。
──つきあってたんでしょ?
その言葉に、志季は、一体どんな返事を返すつもりだったんだろう…。