鬼畜王子の飼育方法
「──…嫌ッ!」
ドン!
気づけば、志季の胸を思いっきり押し退けていた。
「……酷い、酷いよ」
「……だったら、すればいいなんて簡単に言うなっつの」
「そうゆう問題じゃない!」
───キス。
私の、ファーストキスだった。
初めては好きな人と。
ずっとそう思ってた。
志季と出会って、
志季を好きになって、
キスできたら幸せだろうなって、ずっと夢見てた。
なのに──…
「気持ちの無いキスならしてほしくない!!」
好きになって欲しかった。
偽物の優しさじゃなくて。
本当の優しさが欲しかった。
志季のキスは、どうせ偽物なんでしょう──?
だったらどうしてこんなことするんだよ。
最低だよ。
最低──…
ボロボロと溢れる涙が、白い布団に染みを作る。
「…お前、意味わかんねぇよ。気持ちのあるキスならしてもいいわけ?」
──プツリ。
頭の中で何かが切れた。
「…でしょう」
「は?」
「アンタが好きなんだから決まってんでしょう!志季の馬鹿!アホ!玉無し!死んじゃえ!」
愕然とする志季を残し、私は保健室を飛び出した。