鬼畜王子の飼育方法
「…あの、」
片付けを終えてバックヤードに戻ってきた志季の背中に、小さく声をかける。
「何?」
志季は汚れた手を洗いながら、視線だけをこちらに向けてそう言った。
「ほんと、すみませんでした。お店の大事な備品なのに…」
「…何だよ。やけに素直じゃん」
瞬間、志季の口元が僅かに緩んだ。
初めて見る穏やかな表情に、思わず胸が高鳴ってしまう。
志季相手にドキドキするなんて、やっぱり近頃の私は変だ。
「グラス、弁償させてください」
それくらいしないと、私の気が済まないよ。
「…2万」
「へ?」
「あのグラス、2万するけど弁償してくれンの?」
に、に、にっ……
「二万ーっ!?」