鬼畜王子の飼育方法
しかし、もはや言い返す気力さえ無く──…
ただ黙って、店閉めを始める志季の背中を見つめる。
あぁ、完全にお礼言うタイミング失っちゃったよ。
今日で最後、なのに…。
「んじゃ、帰るか」
「あ、はい。じゃあ、おつかれ様でし…」
「じゃなくて!家、どっち?」
──は?
家?なんで?
首を傾げる私に、志季は鞄を肩にかけながら当たり前のように口を開く。
「送るよ」
……え、いや、あの。
この展開、全く予想してなかったんですけれども。
ツッコミ女王たる私が、オチさえ読めなかったなんて…不覚だ。不覚すぎる。
「…で、家は?」
「西中のほうですけど、」
「なんだ。一緒の方向じゃん」
そう言って小さく笑う志季に、再び胸がキュンと高鳴る。
……いやいやいや、こんな笑顔にいちいち脅されてどうするよ私。
志季のことだ。
何か裏があるに決まってる。