それは、春の歌
あの日からのリートの態度は、はっきり言えば変わらなかった。
相変わらず、淡々と彼と接する。
何事もなかったように。
それは一見全くあの件を気にしていないようで、何よりも気にしている証拠だった。
事実、彼女の耳では、いつまでもあの言葉が囁く。
「ボクの前で考え事? いい度胸だね」
「申し訳ありません」
「別に、怒ってないけど」
彼女の心中を全く察せないほど、アルディートは愚鈍ではない。
だが、彼も察しているということは表に出さない。
ある種の、駆け引き。
「ねぇ、リート。抱きしめていい?」
「そういうことはメイドにでも申してください」
「そんなことしたら、ボクのイメージが総崩れじゃないか。それに、」
リートがいい。