それは、春の歌
「王子、もうよろしいですか?」
「やだ」
「王子、私のようなものに軽々しく触れるものではありません」
幾分、困った声色。
もう少し困らせてやりたい、とも思うのだが、ここは一度身を引いておく。
ただし、タダでは引かないのがアルディートという男なのだが。
「名前で呼んだら放してあげる」
「アルディート様」
また。
さすがにここまで頑なだとため息も吐きたくなる。
こちらの望みを知っているくせに。