それは、春の歌
「あのね、リート」
早く放してほしくて仕方ないであろうリートに、子供に言い含めるような口調を発する。
「ボクは恋愛に身分も何もないと思うんだ。誰がいつどこで誰に恋をするかなんて、誰にもわからないのだから」
だからさ、ちゃんと名前で呼んで。
なにがだからなのか、自分で言っておいて脈絡がない、とアルディートは思った。
これでは、言葉はきちんと使うように、という小言にすりかえられてしまう。
けれどもリートは、ただ、素直に従っただけだった。
「放してください……アルディート」