それは、春の歌
シンデレラみたいにかわいくないから
アルディートに見つめられて、リートは目を閉じた。
眉を寄せ、深く、息を吐く。
再び瞳を開いたときには、もういつもの彼女だった。
顕になった感情は、もう何処にもない。
恋愛に身分も何も関係ない?
そんな話がどこにあるというのだ。
ロミオとジュリエットだって、それに阻まれた切ない恋の物語。
それを指摘すれば、アルディートはさらりと、
「へぇ、リートでもそういう本読むんだ」
なんて言ってのけた。
実際、リートはその本を読んだことはなかったのだが、あまりに有名なためその話が身分差の恋の話であることは知っていた。
けれど彼女の知識はそこまで。
決して情緒深く教養をもって生きてきたわけではないリートには、それ以上なんと言ってアルディートを咎めればいいのかわからなかった。