それは、春の歌
「でもシンデレラは身分差の恋だけど、ちゃんと実ったよ」
「それは小説だからであって……」
「最初に物語を引用したのはリートでしょ」
そこを突かれると反論の余地がない。
「大体さ、リートだって満更でもないくせに、心にもないことばっか言ってるんじゃないよ」
「心から申し上げております。あなたとは一緒になれません」
「酷いなあ」
「大体、あなたにはもっとふさわしい女性がいますでしょう」
その言葉に、あからさまにアルディートは不機嫌な顔をした。
ツキン、と痛む胸は見ないふりをする。
本心だ。
そうだ、突き放すような言い方をしたから、だから彼は不機嫌で、
「ふさわしいって、どういう意味」
「例えば貴族の令嬢など、もっと相応の身分と容姿をもった女性はごまんといます」
自分で口にしておきながら、リートは内心で首を傾げる。
はて、アルディートに相応の容姿、という女性はそう簡単に見つかるだろうか。
彼と並べて遜色のない女性など、そういもしないことは、リート自身よくわかっていた。