それは、春の歌
ろくな用もないのに今まで呼び出されていたリートだが、アルディートの声がかからないことでなんとなく暇をもてあます時間を得てしまったリートは、少し困った状況を感じていた。
周りの音が気になるのだ。
男なのか女なのかわからないその容姿と、鉄面皮のせいで、アルディートの言うさまざまな「誤解」が彼女には付きまとう。
以前ならそんなこと気にも留めなかった。
というより、指摘されるまで気づいてもいなかったリートだが、忙しさにずっとアルディートに向いていたベクトルが外部に向けられるようになって、それを実感する羽目となった。
聞きたくなくても聞こえてくる話。
それは最近のアルディートの態度もあいまって、普段に輪をかけて、彼女を蔑むものが多かった。
『傷ついてないわけじゃないのにね。リートは人一倍傷つきやすいから、そうやって表情を隠すんでしょう?』
そう、アルディートは指摘した。
そのとき彼女は否定したが、正直今は、事実だったと認めざるを得ない状況だ。