それは、春の歌
事実今、リートは傷ついていた。
心無い言葉や理不尽な出来事に心痛めぬことなどあるはずもない。
無論、以前から傷つかなかったわけではなかった。
けれどもそれは、いつの間にか癒えていた。
忙しさに、忘れさせられていた。
『リートの心は、ボクが守ってあげる』
いつだったかアルディートはそう笑った。
ずっとずっと、自分が彼を守るべき立場であり、同時にそうありたいと願っていたリートにとって、それはまさに寝耳に水。
守るべき相手に守られるなど、と思ったが同時に、その言葉がどうしようもなく嬉しかったのだ。
「……アルディート様」