それは、春の歌

「リート?」



返事はない。

迷うような間の後、耳慣れた声がした。



「そうです」



短い一言だが、確かに彼女の声。

ならば、と入室を促す。



「……鍵を、かけてもよろしいですか」

「いいよ」



理由など問わずとも知れていた。

ようやく彼女は、素直になる気になったのだ。

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