それは、春の歌

ケンカ別れのようになってしまったあの日は、本気で憤りを感じていた。

あそこまで言って己の気持ちのわからぬわけもなかろうに、それでも頑なな彼女の態度にイラついた。



けれどもその後距離を置いたのは、お互いにクールダウンするべきだと思ったから。

おそらく彼女の頭はパンク状態であろうし、自分も気が高ぶっていた。

だからそれから、一歩を踏み出せばいい、と。

リートからの訪問は予想外であったものの、その表情を見れば、先日のことだと良くわかる。



ゆっくりと、リートが近づく。

目の前で足を止めた彼女を、アルディートは見上げた。



そして、包まれた。

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