それは、春の歌
「じゃあとりあえず、いい加減名前で呼んでくれない?」
「アルディート王子」
「王子は要らない」
「アルディート様」
「様もいらない」
「王子、それはできません」
ようやく、リートは表情を変えた。困ったような、それ。
「ボクがいいって言ってるの」
「できません」
「命令」
「困ります」
「リート」
苦渋の表情で、今度こそリートは聞こえるようにため息を吐いた。
これ以上は何を言っても無駄だ。
猫かぶりの王子は、なぜかリートの前ではそれを脱ぎ捨て、わがまま王子に成り下がる。
それを不快だと思うわけではないが、困るものは、困る。